「贈与契約書」って何?生前贈与を形に残す最初の一歩をやさしく解説
「贈与契約書」って何?生前贈与を形に残す最初の一歩をやさしく解説
ご家族に財産を渡したいとお考えの際、「生前贈与」という言葉を耳にされるかもしれません。 お金や不動産などを渡すことは、ご自身の意思で自由にできます。 しかし、その「贈与」が、後になって「本当に贈与だったのですか?」と問われたときに、きちんと説明できる形にしておくことが、とても大切になります。
特に、相続が発生した後に、「いつ、誰に、いくら渡したか」が曖昧になってしまうと、相続の手続きで困ったり、ご家族の間で誤解が生じたりすることがあります。 また、税務署から「名義預金ではありませんか?」と指摘を受ける可能性もあります。
そこで重要になるのが、「贈与契約書」という書類です。
「贈与契約書」はなぜ大切なのですか?
生前贈与は、財産を渡す方(贈与者)と受け取る方(受贈者)の「あげます」「もらいます」というお互いの意思が合って初めて成立します。 このお互いの意思を確認し、それを文字にして形に残しておくのが「贈与契約書」です。
贈与契約書があると、次のような大切な役割を果たします。
- 贈与があったことの証拠になる: 「いつ、誰に、何を、いくら」贈与したのかが明確になり、後から「言った、言わない」のトラブルを防げます。
- 税務署への説明に役立つ: 生前贈与は相続税を計算する際に考慮されることがあります。税務署から贈与の事実について尋ねられたときに、契約書があることでスムーズに説明できます。
- 「名義預金」と疑われるのを防ぐ: 例えば、親が子供名義の口座にお金を移しても、そのお金を親が管理していたり、子供が贈与されたと認識していなかったりする場合、「名義預金」とみなされ、相続税の対象となることがあります。贈与契約書があれば、正式な贈与であったことを示す重要な証拠になります。
「贈与契約書」は難しく考える必要はありません
「契約書」と聞くと、専門的な知識が必要で難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、贈与契約書は、必ずしも複雑な内容である必要はありません。 贈与者と受贈者が合意した内容を、第三者が見ても分かるように具体的に記載することが大切です。
贈与契約書に書くべきことの例
贈与契約書には、最低限、次の内容を含めるのが一般的です。
- 誰から誰への贈与か: 贈与をする方の名前、住所、そして受け取る方の名前、住所を記載します。
- 何を贈与するのか: 贈与する財産の種類を具体的に書きます。(例: 現金、土地、建物など)
- 贈与する財産の詳細:
- 現金の場合: 金額を具体的に書きます。(例: 金100万円)
- 不動産の場合: 土地であれば所在、地番、地積、建物であれば所在、家屋番号、種類、構造、床面積などを登記簿謄本を見ながら正確に記載します。
- いつ贈与したのか(贈与の日付): 契約を締結した日付を書きます。
- 署名と押印: 贈与をする方と受け取る方の両方が、ご自身の名前を手書きで署名し、印鑑を押します。実印を使うことが一般的です。
自分で作ることもできます
贈与契約書は、ご自身で作成することも可能です。インターネットで「贈与契約書 テンプレート」と検索すると、参考になるひな形が見つかることもあります。 ただし、専門家が作成したひな形を使用する場合でも、ご自身の状況に合わせて内容を修正することが重要です。
自分で作成するのが不安な場合は、専門家(後述します)に相談することもできます。
贈与契約書を作る「最初の一歩」は何ですか?
贈与契約書を作成することを決めたら、まず何をすれば良いのでしょうか。
- 贈与する内容を明確にする:
- 誰に、何を、いつまでに渡したいかを具体的に決めます。
- もし現金であれば、いくら渡すのかを決めます。
- 年間110万円までなら贈与税がかかりにくい、という仕組み(暦年贈与の非課税枠)があります。この枠内で贈与を続ける場合も、毎年契約書を作成することをおすすめします。
- 贈与契約書のひな形を探すか、専門家に相談することを検討する:
- ご自身で書く場合は、信頼できそうなひな形を探してみましょう。ただし、インターネット上の情報は玉石混淆ですので注意が必要です。
- 不動産など複雑な財産を贈与する場合や、書き方に不安がある場合は、専門家への相談を検討します。
- 贈与契約書を作成し、署名・押印する:
- 作成した契約書を、贈与する方と受け取る方の双方が確認し、内容に間違いがなければ、それぞれ署名し、実印を押します。
- 契約書は2通作成し、贈与者と受贈者がそれぞれ保管することが一般的です。
どこに相談すれば良いのですか?
贈与契約書の作成や、生前贈与全般について不安がある場合は、次のような専門家や窓口に相談することができます。
- 税理士: 贈与税や相続税に関すること、税務署への説明に必要な契約書の記載内容などについて詳しい専門家です。
- 弁護士: 贈与や相続に関する法的な手続き全般、契約書の有効性、トラブル予防などについて相談できます。
- 司法書士: 不動産の贈与による名義変更の手続き(登記)や、契約書の作成についてサポートしてくれます。
どの専門家に相談すべきか迷う場合は、まずは税理士や弁護士の無料相談などを利用して、状況を話してみるのも良いでしょう。 また、お付き合いのある金融機関の窓口でも、相続や贈与に関する一般的な相談に乗ってくれる場合があります。
まとめ:不安をなくして、着実に進めましょう
生前贈与を「あげます」「もらいます」だけで終わらせず、「贈与契約書」という形に残すことは、後々の不安を減らすためにとても有効な方法です。 「難しそう」と感じるかもしれませんが、一つずつ内容を確認しながら進めれば大丈夫です。
ご自身で書くこともできますし、必要に応じて専門家の力を借りることも可能です。 最初の一歩として、まずは「誰に、何を、いくら渡したいか」を具体的に考えてみましょう。 そして、「贈与契約書」を作ることを検討してみてください。
この情報が、生前贈与を考えている皆様の安心につながる一助となれば幸いです。