相続で受け取った財産。預金や家などの名義変更、最初の一歩をやさしく解説
相続手続きについて、基本的なことから知りたいとお考えでしょうか。亡くなった方が遺された財産を受け取るためには、いくつかの手続きが必要です。その中でも、財産を正式にご自身のものとするために大切なのが「名義変更」です。
「名義変更と聞くと難しそう」「何をどこに頼めばいいか分からない」と不安に感じていらっしゃる方もいるかもしれません。でも大丈夫です。名義変更は、財産の種類によって手続き先が異なりますが、一つずつ確認しながら進めていくことができます。このコラムでは、相続で受け取った主な財産の名義変更について、最初の一歩として知っておきたいことをやさしく解説します。
相続で名義変更が必要なのはなぜですか?
亡くなった方の名義になっている預貯金や不動産などを、相続した方がご自身の名義に変えるのが名義変更です。なぜ名義変更が必要なのでしょうか。
- 預貯金 亡くなった方の名義のままでは、預金を引き出したり、解約したりすることができません。名義変更または解約の手続きをして、相続した方が自由に使えるようにする必要があります。
- 不動産(土地や建物) 不動産の名義を変えることを「相続登記」といいます。亡くなった方の名義のままでは、その不動産を売ったり、誰かに贈与したりすることが難しくなります。ご自身の名義にしておくことで、将来にわたって土地や建物をどのようにするか、ご自身で決められるようになります。
- その他 株式、自動車、電話加入権なども、名義変更が必要な場合があります。
名義変更は、相続した財産を適切に管理し、ご自身のものとして活用するために欠かせない手続きなのです。
どんな財産の名義変更が必要になりますか?
相続で名義変更が必要になる主な財産には、以下のようなものがあります。
- 預貯金(銀行、ゆうちょ銀行、信用金庫など)
- 不動産(土地、建物、マンションなど)
- 株式や投資信託
- 自動車
- 一部の会員権 など
まずは、亡くなった方がどのような財産を持っていたのかを把握することが大切です。ご自宅にある通帳や権利証、証券会社の書類などを探してみましょう。「相続財産リスト」をまとめてみると、必要な手続きが整理しやすくなります。
名義変更の「最初の一歩」全体像
名義変更を始める前に、いくつか準備しておきたいことがあります。
- 相続財産を把握する 亡くなった方の預金通帳、不動産の権利証、株式の通知などを集め、どのような財産があるかを確認します。借金などのマイナスの財産も一緒に確認することが大切です。
- 誰が何を相続するか決める 遺言書がある場合は、基本的にその内容に従います。遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い、「遺産分割協議書」を作成して、誰がどの財産を相続するかを決めます。
- 必要な書類を準備する 名義変更の手続きには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書など、共通して必要になる書類が多くあります。これらの書類を先に集めておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。
これらの準備が整ったら、いよいよ財産ごとの名義変更手続きに進みます。
財産ごとの名義変更の最初の一歩
財産の種類によって、手続きを行う場所や必要な書類が異なります。ここでは、よくある財産について最初の一歩をご紹介します。
預貯金の名義変更(または解約)
- 手続きをする場所: 亡くなった方が口座を持っていた銀行やゆうちょ銀行などの窓口
- 最初の一歩:
- まずは、亡くなった方が利用していた支店に電話で問い合わせてみましょう。相続手続きに必要な書類や手続きの流れについて教えてもらえます。
- 一般的には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、遺産分割協議書(遺言書がない場合)、届出印、窓口に行く方の本人確認書類などが必要になります。銀行によって必要な書類が少し異なる場合がありますので、必ず事前に確認してください。
- 必要書類を準備して窓口に行き、「相続手続きをしたい」と伝えます。銀行の案内に従って手続きを進めます。
不動産(土地・建物)の名義変更(相続登記)
- 手続きをする場所: 不動産の所在地を管轄する法務局
- 最初の一歩:
- 不動産を相続したら、「相続登記」という名義変更の手続きが必要です。これはご自身で行うこともできますが、専門家である司法書士に依頼することもできます。手続きに不安がある場合は、司法書士に相談することを考えてみましょう。
- ご自身で行う場合は、不動産の所在地を管轄する法務局の「登記相談窓口」に問い合わせてみるのが良い方法です。必要な書類や手続きについて教えてもらえます。
- 一般的に、登記申請書の他に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書、遺産分割協議書(遺言書がない場合)、固定資産評価証明書などが必要になります。
株式の名義変更
- 手続きをする場所: 株式を預けていた証券会社や、株を管理している信託銀行など
- 最初の一歩:
- まずは、株式の「口座」があった証券会社などに問い合わせます。あるいは、株主総会の案内などに記載されている「株主名簿管理人」(信託銀行など)に問い合わせます。
- 相続手続きに必要な書類や流れについて教えてもらえます。預貯金の手続きと似ていますが、専門の書類が必要になる場合があります。
自動車の名義変更
- 手続きをする場所: 亡くなった方の住所地を管轄する運輸支局や軽自動車検査協会
- 最初の一歩:
- 普通自動車の場合は運輸支局、軽自動車の場合は軽自動車検査協会に問い合わせてみます。
- 相続手続きに必要な書類(戸籍謄本、印鑑証明書、車庫証明書など)や手続きの流れについて確認します。行政書士などの専門家に手続きを代行してもらうことも可能です。
困ったときは誰に相談できますか?
名義変更の手続きは、一つ一つ確認しながら進めれば、決して不可能なことではありません。しかし、書類が多くて大変だと感じたり、手続きの方法が分からず困ったりすることもあるかもしれません。そんなときは、一人で抱え込まず、誰かに相談することが大切です。
- 法務局の相談窓口: 不動産の相続登記について相談できます。
- 銀行や証券会社の窓口: 預貯金や株式の相続手続きについて、それぞれの窓口で相談できます。
- 専門家:
- 不動産の相続登記は司法書士に依頼できます。
- 相続に関する税金(相続税など)について心配な場合は税理士に相談できます。
- 相続人同士の話し合い(遺産分割)が進まない場合などは弁護士に相談することも考えられます。
ご自身だけで手続きを進めるのが難しいと感じたら、これらの専門家や窓口を頼ってみるのも良い方法です。費用はかかりますが、手続きをスムーズに進めることができます。
まとめ
相続で財産を受け取った後、預貯金や不動産などの名義変更は、財産を正式にご自身のものとするための大切なステップです。手続きは財産の種類によって異なりますが、
- まずは相続財産を把握する
- 誰が何を相続するか決める
- 必要な共通書類を準備する
という最初の一歩を踏み出し、その後、財産ごとの手続き先に問い合わせて確認しながら進めることができます。
書類集めや手続きに不安を感じることもあるかもしれませんが、法務局や金融機関の窓口、または司法書士などの専門家といった、相談できる場所があります。焦らず、一つずつ確認しながら進めていきましょう。
このコラムが、名義変更手続きの最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。