「相続」と「生前贈与」、何が違うの?自分に合う方法を考える最初の一歩をやさしく解説
ご自身の財産を、お子さんやお孫さんなど次の世代に渡す方法には、大きく分けて二つあります。一つは「相続」、もう一つは「生前贈与」です。
「元気なうちに、何か準備しておいた方が良いのかしら?」 「でも、相続と生前贈与って、何が違うのかしら?自分にはどちらが合っているのかしら?」
このように考え始めたとき、多くの方が少し立ち止まってしまうようです。難しい言葉が出てきそうで、どこから手をつければ良いか分からないと感じるかもしれません。
でも、大丈夫です。難しく考える必要はありません。まずは、この二つの違いの「きほん」を知ることから始めてみましょう。この記事では、相続と生前贈与の基本的な違いを、分かりやすい言葉で丁寧にご説明します。そして、あなたが「自分に合うのはどちらかな?」と考えるための、最初の一歩もご紹介します。
「相続」とは?人が亡くなった後に財産を引き継ぐこと
相続とは、亡くなった方(これを「被相続人」と呼びます)の財産や借金などを、その方の家族などが引き継ぐことをいいます。
法的な手続きをしていなくても、亡くなった方の配偶者やお子さんなど、法律で定められた方(これを「相続人」と呼びます)が、財産を受け取る権利を持つことになります。
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いつ財産が移るの? 亡くなった時です。
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誰が財産を受け取るの? 基本的には、法律で決められた「相続人」です。遺言書がある場合は、遺言書に書かれた方が受け取ることもあります。
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どんな財産が対象になるの? 預貯金、家、土地などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もまとめて引き継ぐことになります。
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税金は? 相続税がかかる場合があります。ただし、財産の合計額が一定の金額よりも少ない場合は、相続税はかかりません。
相続は、特別な準備をしなくても法律で財産が引き継がれる仕組みです。ですが、相続人の間で話し合いが必要になったり、名義変更などの手続きが必要になったりすることもあります。
「生前贈与」とは?生きているうちに財産を贈ること
生前贈与とは、財産を持っている方(「贈与者」)が、生きているうちに、自分の財産を特定の方(「受贈者」)にあげることをいいます。
「あげますよ」「もらいますよ」という、あげる側ともらう側の合意があれば成立します。
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いつ財産が移るの? 生きているうちに、財産をあげた時です。
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誰が財産を受け取るの? あげる側が「この人に渡したい」と決めた人です。家族だけでなく、お世話になった方など、誰にでも贈ることができます。
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どんな財産が対象になるの? 現金や預貯金、家、土地、株など、様々な財産を贈ることができます。渡したいものを選んで、一つずつ、あるいはまとめて贈ることが可能です。
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税金は? 贈与税がかかる場合があります。一般的には、年間110万円を超える贈与を受けた場合にかかります。贈与税は、相続税よりも税率が高くなる傾向があります。
生前贈与は、自分の意思で、渡したい相手に、渡したい財産を、自分のタイミングで渡せるのが特徴です。これにより、ご自身の気持ちを伝えたり、次の世代の役に立てたりすることができます。また、あらかじめ財産を渡しておくことで、将来の相続手続きを simpler にしたり、相続人同士での争いを防ぐことにもつながる場合があります。
相続と生前贈与の大きな違いを整理しましょう
相続と生前贈与は、どちらも財産を次の世代に渡す方法ですが、いくつか大きな違いがあります。
| 違い | 相続 | 生前贈与 | | :--------- | :--------------------------------- | :----------------------------------------- | | 財産が移るタイミング | 財産を持っている方が亡くなった時 | 財産を持っている方が生きている間 | | 財産を受け取る人 | 法律で決められた相続人(遺言書がある場合はその内容も考慮) | 財産をあげる人が自分で決めた人 | | 税金の種類 | 相続税 | 贈与税 | | 手続き | 亡くなった後に、相続人全員で協力して行うことが多い | 生きている間に、あげる人ともらう人が協力して行う |
どちらが良い、悪いということではなく、それぞれに良い点と気を付ける点があります。
あなたに合うのはどちら?考えるための最初の一歩
「相続」と「生前贈与」、どちらの方法があなたにとって合っているか、あるいは両方を組み合わせて使うのが良いか、これはご自身の状況によって異なります。
例えば、
- 財産の種類や量(預貯金が多いのか、家や土地がほとんどなのか)
- ご家族の状況(お子さんが何人いるか、皆さんの関係はどうか)
- ご自身の考え(いつ、誰に、何を渡したいか)
などを考えてみることが大切です。
でも、一人で悩む必要はありません。そして、今すぐに完璧な答えを出そうとしなくても大丈夫です。
まずは、次の「最初の一歩」を試してみてはいかがでしょうか。
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ご自身の財産を書き出してみる 難しく考えず、「どんなものが、どのくらいあるかな?」とノートに書き出してみましょう。預貯金はいくらくらい?家や土地はどこにある?と、分かる範囲で大丈夫です。これが、将来を考える上での大切な「地図」になります。
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信頼できる誰かに話してみる ご家族、親しいご友人、地域で相談できる方など、安心できる相手に「将来のことを少し考えていて…」と、思っていることを話してみましょう。話すことで、頭の中が整理されることがあります。
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一人で難しいと感じたら、相談先があることを知っておく 「やっぱり難しそう」「誰に聞けばいいか分からない」と感じたら、相談できる場所があります。 例えば、お住まいの市役所の高齢者福祉に関する窓口や、地域包括支援センターなどでも、どこに相談すれば良いか案内してもらえる場合があります。 また、弁護士、税理士、司法書士といった専門家も、あなたの状況に合わせて具体的に教えてくれます。最初から専門家に頼まなくても、「こんな場合は誰に聞けばいいの?」と尋ねてみるだけでも、次の一歩が見えてくることがあります。
この記事で、相続と生前贈与の基本的な違いを知ることができたでしょうか。どちらが良いか、という答えは急に見つからなくても大丈夫です。大切なのは、「考えてみよう」と思ったその気持ちと、最初の一歩を踏み出すことです。
どうぞご無理なさらず、あなたのペースで進めてくださいね。