【はじめての相続】「何をすればいいの?」最初の一歩をやさしく解説
はじめての相続、何をすれば良いか分からない…そんなあなたの不安に寄り添います
大切な方を亡くされて、心がお辛い時期に、相続手続きのことまで考えなければならないのは、とても大変なこととお察しいたします。これまで相続について考えたことがなく、「一体、何を、どこから始めればいいのだろうか」「私一人でできるのだろうか」と、大きな不安を感じていらっしゃるかもしれません。
ご安心ください。相続手続きは、決して一度にすべてを完璧にこなさなければならないものではありません。一つずつ、落ち着いて確認しながら進めていけば、必ず前に進むことができます。
この記事では、「はじめて相続を経験する」「何から手をつけていいか全く分からない」というあなたが、まず最初に行うべきこと、知っておくべき基本的なことだけを、専門用語を使わずに分かりやすく解説します。この記事を読んでいただければ、最初の一歩を踏み出すための道筋が見えてくるはずです。
相続手続きの全体像を知る(まずは「何から?」に絞って考えましょう)
相続手続きには、亡くなった方(「被相続人」といいますが、ここでは「亡くなった方」と呼びます)の財産を誰がどのように引き継ぐか、そのために必要な様々な手続きが含まれます。銀行預金の解約や名義変更、不動産の名義変更、相続税の申告など、たくさんの手続きがあるように見えるかもしれません。
ですが、最初からすべてを理解しようとすると、かえって混乱してしまうこともあります。まずは、「何をすればいいのか」という最初の一歩に焦点を当てましょう。
特に重要なのは、以下の二つの点です。
- 期限がある手続きがあること
- その後の手続きのために、必要な情報を集めること
この二つから、あなたの「最初の一歩」を始めていきます。
最初の一歩:期限のある手続きを確認する
相続手続きの中には、「〇日以内に」「〇ヶ月以内に」と期限が決まっているものがあります。まずは、これらの期限を逃さないように確認することが大切です。
1. 死亡届の提出(7日以内)
- 何を? 亡くなったことを市町村役場に届け出る手続きです。火葬や埋葬の許可を得るためにも必要になります。
- いつまでに? 亡くなってから7日以内(国外で亡くなった場合は3ヶ月以内)に行う必要があります。
- 誰が? ご家族など、親族が行うことが一般的です。
- どこへ? 亡くなった方の本籍地、亡くなった場所、届出人の住所地のいずれかの市町村役場に提出します。
- 準備するものは? 死亡診断書(または死体検案書)、届出人の印鑑など。
この死亡届の手続きは、葬儀の準備と並行して行うことがほとんどです。葬儀社が手続きを代行してくれる場合もありますので、確認してみると良いでしょう。
2. 相続放棄または限定承認の検討(3ヶ月以内)
- 何を? 亡くなった方に借金(債務)が多い場合などに、「相続人にならない」と選択できる手続きが「相続放棄」です。亡くなった方の財産で借金を返済し、もし財産が残れば相続する、という手続きが「限定承認」です。
- いつまでに? 亡くなった方が亡くなったことを知った日から3ヶ月以内に手続きを行う必要があります。
- 誰が? 相続人になる可能性のある方です。
- どこへ? 亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
- 注意点 3ヶ月の期限はあっという間に過ぎてしまいます。「もしかしたら借金があるかもしれない」と少しでも心当たりがある場合は、早めに財産を調べ始めるか、専門家に相談することをお勧めします。この期限を過ぎると、原則として借金も含めてすべて相続することになってしまいます。
3. 所得税の準確定申告(4ヶ月以内)
- 何を? 亡くなった方が、年の途中で亡くなるまでに得た所得に対する税金(所得税)の申告と納税です。亡くなった方はご自身で申告できませんので、相続人が代わりに行います。
- いつまでに? 亡くなった日から4ヶ月以内に行う必要があります。
- 誰が? 相続人が複数いる場合は、相続人全員の名前でまとめて申告します。
- どこへ? 亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署に申告します。
- 注意点 亡くなった方が個人事業主だった場合や、不動産収入などがあった場合に必要になることが多い手続きです。給与所得だけだった場合や、年金収入のみだった場合は、準確定申告が不要なこともあります。まずは亡くなった方の収入状況を確認してみましょう。判断が難しい場合は税務署や税理士に相談できます。
これらの期限のある手続きは、まずは「こういうものがあるんだな」と知っておくだけでも、安心感が違うはずです。慌てずに、一つずつ確認を進めましょう。
同時並行で行う:必要な情報を集める
期限のある手続きを進めながら、またはそれが一段落したら、次に「必要な情報を集める」作業を始めます。これは、その後の様々な手続き(預金の名義変更、不動産登記など)を進める上で、土台となる非常に大切な作業です。
集めるべき情報は主に以下の3種類です。
1. 相続人は誰かを確認する
亡くなった方の戸籍謄本などをたどり、法律上、誰が相続人になるのかを正確に確認します。普段お付き合いがないご親族が相続人になることもあります。
- どこで? 亡くなった方の本籍地の市町村役場などで、戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本といった書類を集めます。
- ポイント 生まれてから亡くなるまでのすべての戸籍を集める必要があります。少し手間がかかる作業です。
2. どんな財産があるかを確認する
亡くなった方が持っていたプラスの財産(遺産)を洗い出します。
- 例: 預貯金、株式や投資信託、不動産(土地や建物)、自動車、貴金属、骨董品など。
- どこで? 亡くなった方の自宅を整理したり、郵便物を確認したり、金融機関に問い合わせたりして調べます。預金通帳や権利証、保険証券、固定資産税の通知書などが手がかりになります。
- ポイント 思わぬ場所から財産関係の書類が出てくることもあります。慌てずに、大切な書類を整理していくような気持ちで臨みましょう。
3. どんな借金や義務があるかを確認する
亡くなった方が残したマイナスの財産(債務)や、支払い義務があるものを洗い出します。
- 例: 借入金(住宅ローンなど)、未払いの税金や公共料金、医療費など。
- どこで? 亡くなった方の自宅の書類や郵便物、金融機関からの通知などで確認します。借用書やローン残高証明書などが手がかりになります。
- ポイント マイナスの財産も、プラスの財産と同じように正確に把握することが重要です。「相続放棄」を検討する際にも必要な情報です。
これらの情報集めは、一度にすべてを終える必要はありません。見つかったものから整理していく、という気持ちで進めましょう。
一人で抱え込まず、誰かに相談してみる
相続手続きや必要な情報集めを進める中で、「これはどうしたらいいのだろう」「もっと詳しく知りたいけれど、どう調べればいいのか分からない」といった疑問や不安が出てくるのは当然のことです。そんな時は、決して一人で抱え込まず、誰かに相談してみましょう。
相談できる場所はいくつかあります。
- 市町村役場: 相続に関する一般的な制度の説明や、関連する手続き(死亡届など)について案内を受けることができます。
- 地域包括支援センター: 65歳以上の高齢者の様々な相談を受け付けている窓口です。生活全般の困りごととして、相続に関する不安や、どこに相談すれば良いかといったことについても話を聞いてもらえる場合があります。
- 金融機関の窓口: 亡くなった方の預金に関する手続き(残高証明の発行、名義変更や解約)について相談できます。
- 専門家(弁護士、税理士、司法書士など):
- 弁護士: 相続人の間で話し合いが進まない、遺言書があるが内容に疑問があるなど、法律的な問題やトラブルが心配な場合に相談できます。
- 税理士: 相続税の計算や申告が必要かどうか判断に迷う、相続税の申告を依頼したい場合に相談できます。
- 司法書士: 不動産の名義変更(相続登記)や、裁判所に提出する書類の作成など、手続き全般について相談できます。
最初からどの専門家に相談すれば良いか分からなくても大丈夫です。まずは役所や地域包括支援センターなどで、大まかな状況を話してみるのも一つの方法です。そこから適切な相談先を紹介してもらえることもあります。
まとめ:最初の一歩は「知ること」「集めること」
この記事では、相続手続きが初めてで不安なあなたに向けて、まず最初に行うべきこととして、以下の点をお伝えしました。
- 死亡届など、期限のある手続きがあることを知る
- 相続人は誰か、どんな財産や借金があるか、情報を集め始める
- 一人で悩まず、役所や専門家など、誰かに相談することを考える
相続手続きは、急いですべてを終わらせる必要はありません。焦らず、一つずつ確認し、分からないことはそのままにせず、誰かに尋ねてみることが大切です。
この記事が、あなたの相続手続きの「最初の一歩」を踏み出すための一助となれば幸いです。大変な時期ですが、どうぞご自身を大切にしながら進めていってください。