【事前に話しておこう】相続の「家族会議」って何?安心のための最初の一歩をやさしく解説
相続の準備、「家族で話し合うこと」は大切です
相続という言葉を聞くと、「手続きが難しそう」「税金はかかるのだろうか」など、様々な不安を感じるかもしれません。特に、誰に何を遺すか、残された財産をどう分けるかといったことは、家族の間で話し合うのが難しいと感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、専門家の方々もよくお話しされていることですが、相続が実際に起きた後に家族で話し合うこと(これを「遺産分割協議」と呼びます)は、時に意見が合わず、ご家族の間でトラブルになってしまうことも残念ながらあります。
そうした将来の不安を少しでも減らし、ご家族皆さんにとって安心できる相続を迎えるために、「事前に」家族で話し合っておくことがとても大切になります。この記事では、相続に向けた「家族会議」とは何か、なぜ必要なのか、そして、どうやって最初の一歩を踏み出せば良いのかを、やさしく解説いたします。
「相続の家族会議」って何ですか?
「家族会議」と聞くと、何だか堅苦しい集まりを想像するかもしれません。ここでいう「相続の家族会議」とは、文字通りの公式な会議室での話し合いではなく、ご家族で集まって、将来の相続について話し合う機会のことを指します。
なぜ「会議」という言葉を使うのかというと、それは、相続という大切な事柄について、皆さんが真剣に考え、向き合う必要があるからです。けれども、重く考えすぎる必要はありません。大切なのは、ご家族がお互いの気持ちや考えを知り、準備を始めるきっかけとすることです。
まだ元気なうちに、また、相続が始まる前に、少しずつでも良いので、ご家族で話し合いの時間を持ってみましょう。
なぜ、相続について「事前に」話しておくのが大切なのですか?
相続は、残されたご家族が、亡くなった方の大切な財産を受け継ぎ、新たな生活を始めるための大切な手続きです。これをスムーズに進めるためには、事前に話しておくことが多くのメリットにつながります。
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家族がお互いの気持ちや考えを知ることができます 「お父さんはこう考えていたのか」「お母さんはこうしたいと思っていたんだな」という親御さんの気持ちや、「自分はこう思う」というお子さんたちの考えを、お互いに知ることができます。これにより、将来、財産を分ける際に、「聞いていなかった」「そんなつもりではなかった」といった誤解や意見の食い違いを防ぎやすくなります。
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どんな財産があるのかを知るきっかけになります 「財産」というと、現金や預貯金、不動産などを思い浮かべるかもしれません。しかし、どこにどんな財産があるのか、ご家族の方が全て把握しているとは限りません。事前に話し合うことで、ご自宅にある大切な書類や、預貯金通帳の場所、どんな財産があるのかなどを共有するきっかけになります。
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相続の手続きをスムーズに進める準備ができます 相続が始まると、様々な手続きが必要になります。事前に財産のことを知っていたり、誰が中心となって手続きを進めるかなどを話し合っておいたりすると、いざという時に慌てずに済みます。
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親御さんの「こうしたい」という希望を伝えられます 財産を残す親御さんご自身が、「誰に何を遺したい」という希望を持っていることがあります。その希望を事前に家族に伝えておくことで、ご家族は親御さんの意思を尊重した話し合いを進めることができます。これは、遺言書を作るかどうかの話し合いにもつながります。
家族会議で何を話し合えば良いですか?
「話し合う」と言っても、具体的に何を話せば良いか分からないと感じるかもしれません。最初から全てを決める必要はありません。まずは、以下のことについて、少しずつ話し合ってみてはいかがでしょうか。
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どんな財産があるのか 隠し事なく、プラスの財産(預貯金、土地、建物、株式など)だけでなく、マイナスの財産(借金、ローンなど)についても、現状を共有することが大切です。 「どこに銀行口座があるのか」「大切な書類はどこにしまってあるか」など、具体的な場所を共有するだけでも大きな一歩です。
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親御さんの希望 「この家は誰かに住んでほしい」「この土地は売却して分けてほしい」「お世話になった〇〇さんに何か遺したい」など、親御さんが財産についてどのように考えているかを話してみましょう。これは、ご家族にとって親御さんの気持ちを知る大切な機会になります。
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手続きを誰が中心に行うか 相続手続きは、役所や金融機関など、様々な場所で行う必要があります。ご家族の中で、誰が中心となって手続きを進めるか、あるいは皆で協力して行うのかなど、役割分担について漠然と話しておくと良いでしょう。
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漠然とした不安や疑問 「相続税ってかかるの?」「手続きが大変そうだけど、どうすればいいの?」といった、皆さんがそれぞれ抱いている不安や疑問を正直に話してみましょう。専門家の方に相談する必要があるかどうかの判断にもつながります。
家族会議を始めるための「最初の一歩」
さて、「事前に話しておくのが大切」ということは分かったけれど、どうやって切り出せば良いのだろう、と悩むかもしれません。急に「相続の話をしよう!」と言うと、ご家族が身構えてしまう可能性もあります。
重く考えすぎず、まずは「話すこと」を始めるための最初の一歩を踏み出しましょう。
ステップ1:親御さんの気持ちに寄り添う
まずは、親御さんの日頃の様子や体調に寄り添いながら、将来について漠然と話す機会を設けてみましょう。例えば、「最近、健康診断どうだった?」「将来、何か心配なこととかある?」といった、広い意味での「今後」に関する話から入るのが良いかもしれません。
ステップ2:気軽に始めてみる
「もしもの時のために、少しだけお金の話をしておこうか」「大切な通帳の場所だけ、皆で共有しておこう」など、最初は小さなことから切り出してみましょう。一度に全てを話す必要はありません。何度かに分けて、少しずつ進めるくらいの気持ちで大丈夫です。
ステップ3:場所と時間を選ぶ
ご自宅のリビングなど、皆がリラックスして話せる場所を選びましょう。また、時間に追われることなく、落ち着いて話ができる時間帯を選ぶことも大切です。食事の後の団らんの時間なども良いかもしれません。
ステップ4:みんなで聞く姿勢を持つ
誰か一人が一方的に話すのではなく、親御さんの話に耳を傾け、お子さんたちも自分の考えを伝え、お互いの話を聞く姿勢を持つことが大切です。「なるほど、そう思っていたのですね」と、相手の気持ちを受け止めることから始めましょう。
ステップ5:無理に進めない
もし、話し合いが難しくなってしまったり、誰かが感情的になってしまったりした場合は、無理に続ける必要はありません。「今日はここまでにして、また別の日に話しましょう」と、一度中断することも大切です。話し合いは一度きりではなく、時間をかけて行うこともできます。
もし、家族だけでの話し合いが難しいと感じたら
ご家族だけで話し合うのがどうしても難しい、あるいは、もっと専門的な知識が必要かもしれないと感じることもあるでしょう。そんな時は、一人で抱え込まず、相談できる場所があることを覚えておいてください。
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信頼できる親戚や友人 話しやすい関係の親戚や、信頼できる友人にまずは話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることがあります。
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身近な公的な相談窓口 お住まいの市区町村の役所にある福祉の窓口や、地域包括支援センターなどでも、高齢者の暮らしに関する様々な相談に乗ってくれます。必要に応じて、適切な専門機関を紹介してくれることもあります。
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専門家への相談 財産の評価や分け方、税金のことなど、具体的な手続きや専門的な判断が必要な場合は、弁護士、税理士、司法書士といった専門家に相談することも有効な方法です。これらの専門家は、難しい法律や手続きについても分かりやすく説明してくれます。まずは、一度相談してみることから始めても良いでしょう。
まとめ:安心して相続を迎えるために、まずは「話す」ことから始めましょう
相続は、誰もがいずれ直面する可能性のあることです。不安に感じるのは自然なことですが、事前にご家族で話し合い、「家族会議」の時間を持つことは、その不安を和らげ、将来の安心につながる大切な一歩となります。
最初から全てを決めようと気負う必要はありません。まずは、「こんな財産があるんだよ」「こんな風に考えているんだよ」と、お互いに知ることから始めてみましょう。話すことが難しいと感じる場合も、無理せず、相談できる場所を活用しながら、一歩ずつ進んでいくことが大切です。
この記事が、ご家族で相続について話し合うきっかけとなり、皆さまが安心して将来を迎えられるための一助となれば幸いです。