相続で大切な『法定相続分』。遺産の取り分のきほんと最初の一歩をやさしく解説
生前贈与や相続について考えている方、あるいは相続手続きに直面されている皆様、こんにちは。
相続について調べていると、「法定相続人」という言葉や、「遺産をどう分けたら良いのだろう」という疑問にぶつかることがあるかと思います。
法定相続人が誰か分かった次に、「では、その人たちが遺産をどれだけもらうことができるのか」という点が気になりますよね。
法律では、相続人が遺産を受け取る割合について、一つの目安を定めています。これが「法定相続分（ほうていそうぞくぶん）」と呼ばれるものです。
この法定相続分を知っておくことは、相続手続きを進める上で、とても大切な一歩となります。今回は、この法定相続分について、基礎の基礎から分かりやすく解説します。
法定相続分とは、法律で決められた「取り分の目安」です
法定相続分とは、簡単に言うと、「もし遺言書がない場合や、遺産をどう分けるか話し合って決める場合に、法律が基準として示している遺産の取り分の割合」のことです。
これは、相続人それぞれの立場に応じて、「これくらいの割合を受け取るのが一般的でしょう」という目安を示したものです。
ただし、これはあくまで「目安」である、ということを覚えておいてください。実際に遺産をどう分けるかは、亡くなった方が遺言書を残していれば原則としてその内容に従いますし、相続人全員で話し合い（遺産分割協議）をして決めることもできます。その話し合いで、法定相続分とは違う分け方をすることも可能です。
法定相続分は、誰が相続人かで割合が変わります
法定相続分の割合は、亡くなった方（被相続人といいます）の相続人が「誰であるか」によって変わってきます。
相続人には、法律で決められた順位があり、基本的には順位が高い人が優先して相続人となります。法定相続分は、その相続人となった人たちの間で計算されます。
ここでは、一般的な家族構成での法定相続分の割合を見てみましょう。
1. 配偶者と子が相続人の場合
最も多いケースです。亡くなった方に配偶者がいて、お子さんがいる場合です。
- 配偶者: 遺産の2分の1
- 子: 残りの2分の1 を、子の人数で等分します。
例えば、配偶者とお子さんが2人いらっしゃる場合、配偶者は遺産の2分の1、お子さん2人はそれぞれ遺産の4分の1ずつを受け取るのが法定相続分です。
2. 配偶者と親（直系尊属）が相続人の場合
亡くなった方にお子さんがいなくて、配偶者とお父様やお母様（ご存命であれば）が相続人になるケースです。
- 配偶者: 遺産の3分の2
- 親（直系尊属）: 残りの3分の1 を、ご存命の親の人数で等分します。
例えば、配偶者とお父様・お母様がご存命の場合、配偶者は遺産の3分の2、お父様とお母様はそれぞれ遺産の6分の1ずつを受け取るのが法定相続分です。
3. 配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
亡くなった方にお子さんも親御さんもいなくて、配偶者とご自身の兄弟姉妹が相続人になるケースです。
- 配偶者: 遺産の4分の3
- 兄弟姉妹: 残りの4分の1 を、兄弟姉妹の人数で等分します。
例えば、配偶者とご自身の兄弟が2人いらっしゃる場合、配偶者は遺産の4分の3、兄弟2人はそれぞれ遺産の8分の1ずつを受け取るのが法定相続分です。
4. 子だけが相続人の場合
亡くなった方に配偶者がおらず、お子さんだけが相続人になるケースです。
- 子: 遺産の全部 を、子の人数で等分します。
5. 親（直系尊属）だけが相続人の場合
亡くなった方に配偶者もお子さんもおらず、親御さんだけが相続人になるケースです。
- 親（直系尊属）: 遺産の全部 を、ご存命の親の人数で等分します。
6. 兄弟姉妹だけが相続人の場合
亡くなった方に配偶者もお子さんも親御さんもおらず、ご自身の兄弟姉妹だけが相続人になるケースです。
- 兄弟姉妹: 遺産の全部 を、兄弟姉妹の人数で等分します。
このように、相続人の組み合わせによって法定相続分の割合は異なります。
法定相続分を知ることが、なぜ大切なのでしょうか？
法定相続分は、実際の遺産分割の際の「出発点」や「目安」となる大切な情報です。
- 遺産分割協議の参考に: 相続人全員で遺産をどう分けるか話し合う際（遺産分割協議）、まずこの法定相続分を参考にすることが一般的です。「法律ではこれくらいとされているけれど、皆さんでどう分けましょうか」と話し合いを進める際の基準になります。
- 遺言書の内容を理解するために: 亡くなった方が遺言書を残していた場合、その内容が法定相続分と大きく違うことがあります。遺言書の内容が、相続人全員が最低限受け取れるとされる「遺留分（いりゅうぶん）」を侵害していないかなどを考える上でも、法定相続分の知識は役に立ちます。
- 「自分の取り分」の目安を知るために: 法定相続分を知ることで、「自分がおおよそどれくらいの割合の遺産を受け取る可能性があるのか」という目安が分かります。これは、漠然とした不安を減らし、具体的な手続きに向けて気持ちを整理する助けになるでしょう。
法定相続分を知った、最初の一歩はどうすれば良い？
法定相続分が分かったら、次に進むべき大切なステップがあります。
- 相続人が全員で誰かを確認する: 法定相続分を計算するためには、まず「誰が相続人であるか」を正確に確定する必要があります。これは、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを集めて確認します。
- 相続財産を正確に把握する: どのような財産がどれだけあるのかを一覧にします（財産目録の作成）。プラスの財産（預貯金、不動産、株式など）だけでなく、マイナスの財産（借金、ローンなど）も含まれます。
- 相続人全員で話し合いを始める準備をする: 相続人全員が確定し、財産の内容も把握できたら、いよいよ遺産をどう分けるかの話し合い（遺産分割協議）に向けて準備を始めます。法定相続分を参考にしながら、どのように遺産を分けたいか、考えを整理してみましょう。
これらのステップは、一つずつ順番に進めていけば大丈夫です。
困ったときは、誰かに相談しましょう
相続の手続きは、慣れないことばかりで不安に感じるのは当然のことです。法定相続分だけでなく、相続人や財産の調査など、分からないことや難しいと感じることが出てくるかもしれません。
そのようなときは、一人で抱え込まずに、信頼できる専門家や相談窓口に頼ってみましょう。
- 弁護士: 相続人同士の意見がまとまらない場合や、法的な手続き全般について相談できます。
- 税理士: 相続税に関する相談や申告をお願いできます。法定相続分は税金の計算の目安にもなります。
- 司法書士: 不動産の名義変更など、登記に関する手続きを依頼できます。
- 公的機関: 市役所や地域包括支援センターなどで、一般的な相談を受け付けている場合もあります。
専門家は、私たちの代わりに難しい手続きを進めてくれたり、適切なアドバイスをくれたりします。遠慮なく頼ることも、大切な一歩です。
まとめ
今回は、相続における「法定相続分」について、基本的な考え方と具体的な割合をやさしく解説しました。
法定相続分は、遺産の「取り分の目安」として法律が定めているものです。誰が相続人になるかによって割合は変わってきますが、これを知っておくことは、その後の遺産分割の話し合いなどを進める上で非常に役立ちます。
相続の手続きは、一度にすべてを理解しようとすると難しく感じますが、一つずつ確認しながら進めていけば、必ず道は開けていきます。
まずは、誰が相続人であるか、そして遺産には何があるのかを確認することから始めてみましょう。そして、この法定相続分を参考にしながら、相続人の皆さんで協力して手続きを進めていかれることを願っております。
もし分からないことがあれば、専門家や相談窓口に遠慮なく頼ってくださいね。