【相続税ゼロでも】「何もしなくていいの?」相続手続きの最初の一歩をやさしく解説
相続税がかからない時でも、手続きは必要です
大切な方が亡くなられた後、様々な手続きに追われ、心身ともに大変な日々をお過ごしのこととお察しいたします。
「うちは財産が少ないから、相続税はかからないだろう」
そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。もし相続税がかからない場合、相続に関する手続きは「何もしなくていいのだろうか」と考える方もいらっしゃいます。
しかし、相続税がかからない場合でも、手続きは必要になることがほとんどです。この記事では、相続税がかからない場合の相続手続きについて、なぜ手続きが必要なのか、そして最初の一歩として何をすれば良いのかを、分かりやすく解説します。
「相続税がかからない」とはどういうこと?
まず、「相続税がかからない」のは、一般的に「相続財産の合計額が、基礎控除額という決められた金額以下である場合」です。
基礎控除額は、亡くなった方の財産の合計額から差し引くことができる金額で、相続税の計算の基になります。この基礎控除額よりも財産が少なければ、相続税はかかりません。
基礎控除額は、法律で決められており、相続人の人数によって金額が変わります。難しい計算は専門家に任せれば大丈夫ですが、「亡くなった方の財産全てを足し合わせても、基礎控除額より少ないだろうな」と感じる場合は、相続税はかからない可能性が高いです。
相続税がかかるかどうかは、専門家である税理士さんに相談するのが一番確実ですが、まずはご自身の感覚で、この記事を読み進めていただいても大丈夫です。
相続税がかからなくても、どうして手続きが必要なのですか?
相続税がかからない場合でも、なぜ手続きが必要なのでしょうか。それは主に、亡くなった方の名義になっている財産を、新しく相続した方の名義に変更するためです。
例えば、次のような財産は、そのままにしておくと様々な困りごとが起こる可能性があります。
- 不動産(土地や家):
- 売却したり、誰かに貸したりすることができません。
- ご自身の死後、お子様やお孫様が相続しようとした際に、さらに手続きが複雑になってしまうことがあります。
- 放置しておくと、誰のものでもない「不明な土地」となり、将来的に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
- 預貯金:
- 亡くなった方の名義のままでは、銀行から引き出すことができません。
- 光熱費や税金などの引き落としができなくなることがあります。
- 株式や投資信託:
- 売却したり、配当金を受け取ったりすることができません。
- 自動車:
- 売却したり、廃車にしたりすることができません。
これらの名義変更の手続きは、相続税がかかるかどうかに関わらず、財産を受け継いだ方が行う必要があるのです。
相続税がかからない場合の相続手続き。最初の一歩は何をすればいい?
相続税がかからないと分かった場合でも、基本的に相続税がかかる場合と同じように、いくつかの大切なステップを踏む必要があります。難しく考えず、一つずつ確認しながら進めていきましょう。
最初の一歩として、まず行うべきことは、次の3つです。
- 「誰が相続人になるのか」を確認する
- 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを集めて、法律で定められた相続人(法定相続人といいます)は誰なのかを正確に確認します。
- これには時間がかかることもありますので、早めに取りかかると良いでしょう。
- 戸籍謄本は、本籍地のある市区町村役場で取得できます。郵送で請求することも可能です。
- 「どのような財産がどれくらいあるのか」を調べる
- 亡くなった方が所有していた土地、家、預貯金、株式、自動車などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産を全て調べます。
- 通帳や権利証、郵便物などを手がかりに、根気強く探してみましょう。
- 財産の一覧「財産目録」を作ることをお勧めします。
- 相続人全員で「どの財産を誰が受け取るか」を話し合う
- 相続人全員が集まり、調べた財産をどのように分けるかを話し合います。これを「遺産分割協議」といいます。
- 全員が納得するように、しっかりと話し合いましょう。
この話し合いがまとまったら、その内容を記した「遺産分割協議書」という書類を作成します。この書類は、後の名義変更手続きで必要になります。
これらの手続きの進め方について、具体的にまとめた記事もありますので、そちらも参考にしてみてください。
困った時の相談先
手続きを進める中で、「これで合っているのかな」「どうすればいいか分からない」と不安になることもあるかもしれません。一人で抱え込まず、誰かに相談することが大切です。
- 市区町村役場:
- 戸籍謄本の取得方法など、基本的な手続きについて相談できます。
- また、役所の高齢者向けの窓口(地域包括支援センターなど)で、どこに相談したら良いか案内してもらえる場合もあります。
- 金融機関の窓口:
- 亡くなった方の預貯金の名義変更など、その金融機関での手続きについて相談できます。
- 専門家:
- 手続き全般について不安がある場合や、相続人同士での話し合いが難しい場合は、専門家へ相談することを検討してみましょう。
- 弁護士: 相続人同士の話し合い(遺産分割協議)で意見がまとまらない場合など、法律的な問題について相談できます。
- 司法書士: 不動産の名義変更手続きなどについて相談できます。
- 税理士: 相続税の計算や申告について相談できます。(相続税がかからない場合でも、財産評価などで迷う場合に相談できます)
- 手続き全般について不安がある場合や、相続人同士での話し合いが難しい場合は、専門家へ相談することを検討してみましょう。
どの専門家に相談すべきか迷う場合は、まずは最寄りの弁護士会、税理士会、司法書士会などに問い合わせてみるのも一つの方法です。
まとめ:慌てず、一つずつ進めましょう
相続税がかからない場合でも、亡くなった方の財産の名義変更など、必要な手続きは存在します。
大切なのは、慌てずに、一つずつ確認しながら進めることです。 「誰が相続人か」「どんな財産があるか」を調べ、相続人みんなでよく話し合うこと。そして、必要に応じて名義変更の手続きを行うこと。
もし分からないことがあれば、役所や金融機関、あるいは専門家といった信頼できる場所に相談してみてください。きっと助けになります。
この記事が、相続税がかからない場合の相続手続きについて、「最初の一歩」を踏み出すためのお役に立てれば幸いです。