相続手続きで必要な書類は?戸籍謄本など、集め方のやさしい解説
相続手続きの書類集め。何から始めれば良いのでしょうか
大切な方を亡くされ、相続の手続きを始めるにあたり、「たくさんの書類が必要になりそう」「何から集めれば良いのか分からない」と、不安を感じていらっしゃるかもしれません。
確かに、相続の手続きには、さまざまな書類が必要になります。戸籍謄本や亡くなった方の財産に関わるものなど、聞き慣れない書類もあるかもしれません。
しかし、ご安心ください。手続きに必要な書類は決まっていますし、一つずつ確認しながら進めれば、きっと集めることができます。
この解説では、相続手続きで必要になる主な書類の種類と、特に大切になる戸籍謄本の集め方を中心に、最初の一歩を分かりやすくお伝えします。
まず知っておきたい、相続手続きで必要になる主な書類
相続の手続きで必要になる書類は、主に次のような目的で使われます。
- 「誰が財産を受け取る人(相続人)なのか」を確認するための書類
- 「亡くなった方がどのような財産を持っていたのか」を確認するための書類
- 「財産をどのように分けるのか」を話し合った結果を示す書類
- その他、税金に関わる書類など
これらの書類を揃えることで、法的に誰が相続人であるかを証明し、財産の内容を明らかにし、その財産をどのように分けるかを定めていくことになります。
手続きの種類によって必要な書類は異なりますが、特に「誰が相続人なのか」を証明するための書類は、ほとんどの手続きで必要になります。
相続手続きで特に大切な「戸籍謄本」の集め方
相続手続きの最初の段階で、最も大切かつ少し手間がかかることがあるのが、「戸籍謄本(こせきとうほん)」の取得です。
戸籍謄本は、その方の身分関係(生まれたこと、結婚したこと、亡くなったことなど)を証明する大切な書類です。相続の手続きでは、この戸籍謄本を使って、「法定相続人は誰か」を正確に確認します。
なぜ戸籍謄本が必要なの?
法律で定められた「法定相続人」を漏れなく、正確に確定するためです。これにより、財産を受け取る資格のある方を正しく把握することができます。
どのような戸籍謄本が必要なの?
主に次の二種類の戸籍謄本が必要になります。
- 亡くなった方(被相続人)の「出生から死亡まで」の連続した戸籍謄本
- これは、亡くなった方に、前の配偶者やお子さんがいないか、養子縁組はしていないか、など、生涯にわたる身分関係を確認するためです。
- 本籍地を何度も移している場合、複数の市区町村役場から戸籍を取り寄せる必要があります。
- 財産を受け取る方(相続人)全員の「現在の」戸籍謄本
- 相続人であることを証明するために必要です。
戸籍謄本はどこで取得できるの?
戸籍謄本は、その戸籍が保管されている「本籍地」のある市区町村役場で取得できます。
- 本籍地が今お住まいの市区町村にある場合:
- お住まいの市区町村役場の窓口で申請して取得できます。
- 本籍地が遠方にある場合:
- 本籍地の市区町村役場に、郵送で申請して取り寄せることもできます。役場のホームページなどで申請方法や必要な書類(申請書、本人確認書類のコピー、手数料分の定額小為替など)を確認してみてください。
戸籍謄本を集めるのが大変に感じる時は
亡くなった方が何度も本籍地を移している場合など、出生から死亡までの戸籍をすべて集めるのが大変だと感じるかもしれません。
そのような時は、まずは戸籍をたどれるところから始めてみましょう。分からないことがあれば、本籍地の市区町村役場の戸籍係に電話で相談してみるのも良い方法です。「相続のために、〇〇(亡くなった方の名前)の出生から死亡までの戸籍を揃えたいのですが」と伝えると、丁寧に対応してくれることが多いです。
役所の方が、次にどの役場に請求すれば良いかを教えてくれることもあります。焦らず、一つずつ確認しながら進めることが大切です。
その他、主な必要書類とその集め方(簡単なご紹介)
戸籍謄本の他にも、手続きによって以下のような書類が必要になります。
- 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
- 亡くなった方の最後の住所を確認するために必要です。最後の住所地の市区町村役場で取得できます。
- 財産を受け取る方(相続人)の住民票
- 相続人であることを証明するために必要です。お住まいの市区町村役場で取得できます。
- 印鑑証明書
- 遺産分割協議を行った場合などに必要になります。お住まいの市区町村役場で取得できます。発行から3ヶ月以内など有効期限が定められていることが多いです。
- 預貯金の残高証明書や取引明細書
- 金融機関の窓口で「相続手続きのため」と伝えて請求します。金融機関ごとに手続き方法が異なりますので、まずは電話などで問い合わせてみましょう。
- 不動産(土地や建物)の登記事項証明書(登記簿謄本)
- 不動産の内容(どこにあり、誰が所有しているかなど)を確認する書類です。全国の法務局で取得できます。最寄りの法務局の窓口に行くか、郵送で請求することもできます。
- 固定資産税評価証明書
- 不動産の評価額を確認する書類で、相続税の計算などで必要になることがあります。不動産がある市区町村役場の窓口で取得できます。
これらの書類も、必要なものが分かれば、それぞれ取得できる場所が決まっています。
書類集めの「最初の一歩」は何をすれば良い?
相続手続きに必要な書類集めの最初の一歩は、まず「どのような書類が必要になるのか」を知ることから始まります。この記事で、主な書類の種類と取得先がある程度お分かりいただけたかと思います。
次に、実際に書類を集め始めることになりますが、まずは戸籍謄本から集め始めるのが一般的です。特に、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍を集める作業は、時間がかかることがあります。
慌てる必要はありません。一つずつ、役場に問い合わせながら、郵送も活用しながら、ゆっくりと進めていきましょう。
もし、「一人で書類集めをするのは難しそう」「どうすれば良いか全く分からない」と感じる場合は、無理をしないでください。専門家や公的な窓口に相談することもできます。
困ったら相談できる場所があります
相続手続きや書類集めについて、分からないことや不安なことがあれば、一人で悩まずに相談してみてください。
- 市区町村役場の窓口: 戸籍の取得など、役場で取得できる書類については、担当の係に相談できます。
- 法務局: 不動産に関する手続きや、遺言書の保管制度などについて相談できます。
- 専門家(弁護士、税理士、司法書士など): 相続の全体的な手続き、税金、不動産の名義変更など、専門的な知識を持つ方々です。有料の相談になることが多いですが、一度相談してみることで、必要な書類や手続きの流れが明確になることもあります。
- 地域の相談窓口: 地域包括支援センターなどでも、相続に関する一般的な情報提供や、適切な相談先の案内をしてくれる場合があります。
誰に相談すれば良いか迷う場合は、まずはお近くの役場や地域包括支援センターに問い合わせてみるのも良いでしょう。
まとめ:焦らず、できることから始めましょう
相続手続きに必要な書類集めは、確かに手間のかかる作業ですが、適切に進めれば必ず終わります。
まずは、どのような書類があるのかを知り、特に戸籍謄本から集め始めるのが最初の一歩です。分からないことは、役場の窓口などで確認しながら進めていきましょう。
そして何より大切なのは、一人で抱え込まず、困った時には相談できる場所があることを知っておくことです。専門家の力を借りることも、決して特別なことではありません。
焦らず、ご自身のペースで、できることから一つずつ進めてください。