相続で借金が見つかったら?どうすればいいか、最初の一歩をやさしく解説
相続で借金が見つかったら?どうすればいいか、最初の一歩をやさしく解説
相続、と聞くと、亡くなった方が残された家や土地、預貯金といったプラスの財産を思い浮かべることが多いかもしれません。しかし、実は相続の対象となる財産には、借金や未払いの税金など、マイナスの財産も含まれることがあります。
もし、亡くなった方の財産を整理している中で、思いがけず借金が見つかったら、どのように考え、どうすれば良いのか、不安になることもあるでしょう。
この記事では、相続財産に借金が含まれていた場合に、知っておきたい大切なことと、まず最初の一歩として何をすれば良いのかを、分かりやすく丁寧にお伝えします。
相続財産には「借金」も含まれるって本当ですか?
はい、本当です。法律では、亡くなった方が持っていたプラスの財産(プラスの資産)だけでなく、マイナスの財産(マイナスの負債)もまとめて相続人が引き継ぐことになっています。
このマイナスの財産には、例えば次のようなものが含まれます。
- 借金(消費者金融からの借入、銀行からのローンなど)
- 連帯保証債務(誰かの借金の保証人になっていた場合)
- 未払いの家賃、光熱費、医療費
- 未払いの税金(所得税、住民税など)
これらのマイナスの財産は、プラスの財産と合わせて、相続人が引き継ぐことになるのです。
もし借金が見つかったら、必ず引き継がないといけないのですか?
必ずしも引き継がなくてはいけない、というわけではありません。相続財産に借金があることが分かった場合、相続人には主に3つの選択肢があります。
- 単純承認(プラスもマイナスもすべて相続する)
- 相続放棄(プラスもマイナスも一切相続しない)
- 限定承認(プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を清算し、残ればプラスの財産を相続する)
何もしないでいると、自動的に「単純承認」を選んだことになります。つまり、亡くなった方の借金もすべて引き継ぐことになってしまうのです。
もし、借金が多くて、プラスの財産でとても返済できないような場合は、「相続放棄」や「限定承認」を検討することになります。
「相続放棄」と「限定承認」はどのようなものですか?
どちらも、相続する財産について、家庭裁判所というところに手続きを行う必要があります。
相続放棄とは?
相続放棄をすると、「初めから相続人ではなかった」ことになります。つまり、家や土地、預貯金といったプラスの財産も一切相続できませんが、借金などのマイナスの財産も一切引き継がなくてよくなります。
- メリット: 借金を背負う心配が全くなくなることです。
- デメリット: 大切な思い出の品や、他のプラスの財産も手放すことになります。また、次の順位の相続人に相続権が移るため、その方にも知らせる配慮が必要な場合があります。
限定承認とは?
限定承認は、「相続したプラスの財産の範囲内でだけ、マイナスの財産を返済する」という方法です。例えば、プラスの財産が500万円あり、借金が700万円あった場合、プラスの財産である500万円を借金の返済に充てますが、残りの200万円の借金は返済しなくてよくなります。もしプラスの財産が借金よりも多かった場合は、借金を返済した後に残ったプラスの財産を相続することができます。
- メリット: 借金の心配をすることなく、プラスの財産が残る可能性がある方法です。
- デメリット: 手続きがとても複雑で、相続人全員で協力して手続きを行う必要があります。
相続放棄や限定承認には「期限」があります
大変重要なこととして、相続放棄や限定承認の手続きには「期限」が決められています。
原則として、「自分が相続人になったと知ったときから3ヶ月以内」に、家庭裁判所に申述(申し立て)を行う必要があります。
もし、この3ヶ月の間に手続きをしないと、自動的に単純承認をしたものとみなされ、借金も引き継ぐことになってしまいます。
この3ヶ月という期間は、相続財産に借金がないか、あるとすればどれくらいあるのかを調べたり、相続放棄や限定承認をするかどうかを考えたりするための時間です。
借金が見つかったら、まず最初の一歩として何をすれば良いですか?
もし、亡くなった方の財産の中に借金があるらしい、あるいは借金があるかもしれないと感じたら、不安に思われるかもしれませんが、まずは落ち着いてください。そして、次のような一歩を踏み出すことを考えてみましょう。
一歩目:慌てずに、まずは状況を把握してみましょう
借金の有無や正確な金額を確認することが大切です。亡くなった方の手紙や書類、通帳などを丁寧に探してみましょう。
- 借用証や金銭消費貸借契約書
- ローン契約書
- 金融機関や貸金業者からの督促状、通知書
こういった書類が見つかるかもしれません。これらの書類から、どこから、いくら借りていたのか、といった情報が分かります。
また、過去のやり取りが分かる通帳の記録なども参考になることがあります。
二歩目:期限(3ヶ月)があることを意識しておきましょう
「自分が相続人になったと知ってから3ヶ月」という期限が、これからどのように対応を考えるかの大切な期間になります。この期限内に、相続放棄や限定承認の手続きをするかどうかを決めて、必要であれば手続きを進める必要があります。
まだ時間があるから、と後回しにせず、この期限を意識して対応を考えることが大切です。
三歩目:一人で抱え込まず、信頼できる相手に相談してみましょう
相続に関する手続きは、聞き慣れない言葉が多く、一人で進めるのは大変に感じられるかもしれません。特に、相続財産に借金がある場合など、判断に迷うこともあります。
そのような時は、一人で抱え込まず、信頼できる相手に相談することをお勧めします。
例えば、
- 弁護士や司法書士:相続に関する専門家です。特に相続放棄や限定承認の手続きについて、法的なアドバイスや手続きのサポートをしてくれます。
- 市役所や地域包括支援センター:地域の相談窓口として、どのような専門家に相談すれば良いかといった情報提供をしてくれることがあります。
- 金融機関の窓口:亡くなった方が借り入れをしていた金融機関に相談してみるのも一つの方法です。
専門家に相談することで、自分の状況に合ったアドバイスをもらえたり、複雑な手続きを代わりに進めてもらえたりすることがあります。相談することで、不安な気持ちが軽くなることも多いはずです。
まとめ:借金が見つかっても、適切な対応を考えられます
相続財産に借金が見つかったら、驚きや不安を感じるのは自然なことです。しかし、知っておけば、どのように対応すれば良いかの選択肢があることをご理解いただけたかと思います。
大切なのは、慌てずに状況を確認し、期限があることを意識しながら、必要に応じて専門家や信頼できる相談相手に助けを求めることです。一つずつ、確認しながら進めていけば、きっと大丈夫です。
この記事が、相続財産に借金が見つかった際の不安を少しでも和らげ、最初の一歩を踏み出すためのお役に立てれば幸いです。