安心して将来を迎えるために。相続トラブルを防ぐ生前準備と最初の一歩をやさしく解説
相続は、残されたご家族にとって大切な手続きです。しかし、場合によっては話し合いがうまくいかず、ご家族の間でトラブルになってしまうことも残念ながらあります。「争族」と呼ばれることもあり、ご心配されている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、将来、残されたご家族が困ったり、もめたりしないように、ご自身が元気なうちからできる生前準備の考え方と、まずは何から始めればよいかという最初の一歩を、分かりやすくご説明します。
なぜ「生前準備」が大切なのでしょうか?
相続が発生すると、ご家族は故人様の財産を誰がどれだけ受け継ぐかを話し合うことになります。このとき、故人様の財産がはっきり分からなかったり、「誰に何を渡したい」という故人様の意思が伝わらなかったりすると、ご家族がそれぞれ違う考えを持ってしまい、話し合いが進まなくなることがあります。
また、ご家族は大切な方を亡くされて心の整理もつかない中で、様々な手続きを進めなくてはなりません。こうした心身の負担が大きい時期に、財産のことでさらに心配事が増えてしまうのは、ご家族にとって大変つらいことです。
そこで、ご自身が元気なうちに少し準備をしておくことで、将来ご家族がスムーズに手続きを進められるようになり、感謝の気持ちとともに財産を受け継いでもらいやすくなります。これが「生前準備」の大きな目的です。
相続トラブルを防ぐために、生前できることの基本的な考え方
相続トラブルを防ぐための生前準備には、いくつかの大切な視点があります。どれも難しいことではありません。
- 「自分の財産をはっきりさせる」 どこに、どのような財産があるのかを、ご家族が分かるようにしておくことが大切です。預貯金、不動産、株式など、ご自身でも整理してみましょう。隠しているつもりはなくても、ご家族が全く知らない財産や借金があるというケースは珍しくありません。
- 「誰に、何を、どうしてほしいかを考える」 ご自身の希望を形にしておくことです。例えば、「この家は長男に」「この預金は妻に」といった、具体的な思いがあれば考えてみましょう。ただし、これはあくまでご自身の考えをまとめる第一歩です。
- 「ご家族と話し合っておく」 これが最も大切かもしれません。ご自身の考えを一方的に決めるのではなく、機会があればご家族と少しずつ話し合っておくことで、お互いの気持ちが理解でき、将来の不要な誤解を防ぐことができます。相続や財産の話はしにくいと感じるかもしれませんが、大切な家族が将来困らないように、という気持ちを伝えることが大切です。
- 「大事な情報や書類の場所を整理しておく」 通帳、印鑑、保険証券、権利証など、相続の手続きに必要になる大切な書類がどこにあるのか、ご家族に分かるようにしておきましょう。エンディングノートなどを活用するのも一つの方法です。
まずは何から始めるべきか?最初の一歩
難しく考えすぎず、まずはできることから少しずつ始めてみましょう。最初の一歩としておすすめなのは、以下のステップです。
ステップ1:まずは「どんな財産があるか」を書き出してみる
ご自身の持っている財産(預貯金、土地や建物、株、保険など)と、もしあれば借金について、ノートなどに簡単に書き出してみましょう。通帳を見たり、権利証を確認したりしながら、おおまかで大丈夫です。「財産リスト」を作るイメージです。 どこに何があるか、だけでも分かると、次に考えるべきことが見えてきます。
ステップ2:ご自身の思いをぼんやりでも考えてみる
ステップ1で書き出した財産を、「誰にどうしてほしいか」を考えてみます。例えば、「〇〇銀行の預金は、お世話になった孫にあげたいな」といった、素直な気持ちをメモしておく程度で構いません。法的な難しさは一旦気にせず、ご自身の希望を整理することが目的です。
ステップ3:信頼できるご家族や親しい人に、少し話をしてみる
これが一番勇気がいるかもしれませんが、非常に効果的です。例えば、「私が持っている通帳は、〇〇の引き出しに入っているよ」とか、「将来、お家をどうしてほしいか、一度相談させてほしいな」といった形で、少しずつ話を始めてみましょう。すべてのことを一度に話す必要はありません。まずは「あなたの将来を心配しているよ」という気持ちを伝えるだけでも、ご家族は安心するかもしれません。
一人で抱え込まず、誰かに相談することも大切です
生前準備や相続の話は、どうしても一人で悩んでしまいがちです。しかし、難しく感じたり、どう進めればいいか分からなくなったりしたら、誰かに相談することも考えてみてください。
- 信頼できるご家族や友人: まずは身近な、信頼できる人に話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になります。
- 金融機関の窓口: お金を預けている銀行などで、相続に関する一般的な相談に乗ってくれる場合があります。
- 市役所の相談窓口: 相続に関する基本的なことや、どこに相談すれば良いかなどを教えてくれることがあります。地域包括支援センターでも相談できる場合があります。
- 専門家(弁護士、税理士、司法書士など): 遺言書の作成や、相続税のことなど、具体的な手続きや法的な判断が必要な場合は、それぞれの専門家に相談することができます。「専門家」と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、まずは話を聞いてもらうことから始められます。
大切なのは、焦らず、できることから一つずつ取り組むことです。完璧を目指す必要はありません。ご自身のペースで、少しずつ準備を進めていくことが、将来のご家族の安心につながります。
まとめ
相続が「争族」となることを防ぐためには、ご自身が元気なうちからの生前準備が大変有効です。難しく考える必要はありません。
- まずはご自身の財産を整理すること
- 誰にどうしてほしいか、思いをまとめてみること
- そして何より、大切なご家族と少しずつでも話し合ってみること
これらの最初の一歩から始めてみましょう。もし一人で進めるのが不安になったら、遠慮なく周りの人や専門家を頼ってください。生前準備は、ご家族への最後の贈り物とも言える大切な行動です。