生前贈与をする前に確認!後で困らないための注意点と最初の一歩をやさしく解説
生前贈与を考えていらっしゃる方へ。
大切な財産を、生きている間に大切な方へ贈る「生前贈与」。 子や孫へ財産を渡す方法として、多くの方が関心を持たれています。
生前贈与は、計画的に行えばとても有効な手段です。しかし、何も知らずに進めてしまうと、「こんなはずではなかったのに…」と後で困ってしまうことも残念ながらあります。
特に、これまでこういった手続きにあまり関わってこられなかった方にとっては、「難しそう」「失敗したらどうしよう」と不安に感じられるかもしれません。
ご安心ください。生前贈与にはいくつかの基本的なルールと注意点がありますが、その「基礎の基礎」を知っておくだけでも、大きな安心につながります。
この記事では、生前贈与で「後で困らないため」にぜひ確認しておきたい基本的な注意点と、まず何をすれば良いかの「最初の一歩」を、専門用語を使わずにやさしく解説します。
生前贈与の基本的な考え方のおさらい
生前贈与とは、文字通り、財産の持ち主が生きている間に、その財産を相手に無償で渡すことです。財産を「贈る側」と「もらう側」の双方の「贈ります」「もらいます」という同意があって成立します。
生前贈与を行うと、場合によっては贈られた側に「贈与税」という税金がかかることがあります。贈与税には、年間110万円までは税金がかからない「基礎控除」という仕組みがあります。この基礎控除の範囲内であれば、基本的には贈与税の申告も納税も必要ありません。
生前贈与で知っておきたい基本的な注意点
ここからは、生前贈与を行う上で、後で困らないために特に知っておいていただきたい基本的な注意点をいくつかご紹介します。
注意点1:口約束ではなく、書面(贈与契約書)に残しましょう
生前贈与は、お互いの同意があれば口約束でも法的には成立します。しかし、後々のトラブルを防ぐためには、必ず書面、つまり「贈与契約書」を作成することをおすすめします。
なぜ書面が必要なのでしょうか。
- 「言った、言わない」の争いを防ぐため:例えば、〇年後に〇万円を贈ると約束したのに、年月が経つと内容が曖昧になってしまったり、お互いの記憶が違ったりすることがあります。書面があれば、贈与の内容がはっきりします。
- 税務署への証拠とするため:贈与があったこと、いつ、誰から誰へ、いくら贈与されたのかなどを証明する大切な証拠となります。特に、年間110万円の基礎控除を利用して贈与を続ける場合などには、贈与が毎年確実に行われたことを証明するために役立ちます。
贈与契約書には、難しく考える必要はありません。「いつ」「誰が誰に」「どんな財産を(いくら)」贈与したのかを明確に記載し、贈る側ともらう側の双方が署名・押印するのが基本的な書き方です。ひな形なども参考になりますが、内容に不安があれば専門家などに相談することもできます。
注意点2:「知らないうちに贈与と見なされる」ケースに気を付けましょう
生前贈与のつもりはなくても、税務署から「これは贈与ですね」と指摘されることがあります。代表的なのが、「名義預金」と呼ばれるものです。
例えば、お父様やお母様が、お子様やお孫様名義の銀行口座を作り、そこに親御さんご自身の財産を貯めていくようなケースです。口座の名義は子供でも、実際にお金を管理していたり、そのお金を自由に使えたりするのが親御さんである場合、税務署からは「実質的には親御さんの財産であり、子供に贈与されたとは言えない」と見なされる可能性があります。
これは、たとえ年間110万円以下の入金であっても、贈与として認められない可能性があるということです。本当に贈与として成立させるためには、贈与を受けた側(子供や孫)がそのお金の存在を知っていて、いつでも自由に使える状態にしておくこと、そしてできれば贈与契約書を作成しておくことが大切です。
注意点3:亡くなる直前の贈与は、相続税の計算に影響することがあります
生前贈与は、相続財産を減らして将来かかるかもしれない相続税を抑えるためにも利用されることがあります。しかし、この方法には注意が必要です。
現在のルールでは、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、たとえ生前に行われた贈与であっても、相続税の計算上は、亡くなった方の財産に一度足し戻して計算することになっています。これを「相続財産への持ち戻し」と呼ぶことがあります。
これは、亡くなる直前に慌てて贈与を行って相続税を不当に逃れようとする行為を防ぐためのルールです。
この「一定期間」の具体的な年数や、例外的なケースなど、詳しいルールは少し複雑です。ですが、「亡くなる直前の贈与は、必ずしも相続税の節約にならない可能性がある」という基本的な点を知っておくことが大切です。
詳しくは税務署や税理士といった専門家にご確認いただくことをおすすめします。
注意点4:他のご家族との間で、不公平感が出ないように配慮しましょう
生前贈与は、特定の財産を特定の方に確実に渡せる方法ですが、他の相続人(お子様など)との間で、不公平感が生じてしまう可能性があります。
例えば、長男にだけ自宅を贈与したが、二男には何も渡さなかった、といったケースです。このような場合、後々の相続の際に、残されたご家族の間でトラブルになってしまうことも考えられます。
法的なルール(遺留分など)もありますが、何より大切なのは、ご家族がお互いを思いやり、話し合いを重ねることです。生前贈与を考えていることを伝えたり、その理由を説明したりするなど、事前にご家族の理解を得ておくことが、後々の円満な相続につながります。
まず何をすればいいか:最初の一歩
ここまで、生前贈与の基本的な注意点を見てきました。これらの注意点を知って、少し立ち止まって考えてみることが、すでに最初の一歩と言えます。
では、次に具体的に何をすれば良いのでしょうか。いくつか実行しやすい最初の一歩をご紹介します。
- まずは、生前贈与したい相手(お子様やお孫様など)と話し合ってみましょう。
- なぜ贈与したいのか、何を贈りたいのかなど、お考えを伝えてみてください。
- 相手の方がどのように感じているか、贈与を受けることについてどう考えているかなどを聞いてみましょう。
- ご夫婦で話し合って、ご家族全体で方針を共有することも大切です。
- 「これは贈与になるのかな?」「税金はかかるのかな?」など、疑問に思ったら、誰かに相談してみましょう。
- 税務署の窓口や電話相談:贈与税について基本的なことを聞くことができます。
- 税理士:贈与税の計算や申告、生前贈与の計画について専門的なアドバイスがもらえます。
- 弁護士:家族間の話し合いやトラブル、贈与契約について相談できます。
- 司法書士:不動産などの贈与で登記が必要な場合や、贈与契約書の作成について相談できます。
- お近くの地域包括支援センターや役所の相談窓口:高齢者向けの様々な相談に応じてくれる場合があります。
- 利用している金融機関の窓口:資産に関することなので、相談できる場合があります。
ご自身だけで全てを調べようとせず、専門家や詳しい方に頼ることも、とても大切な「最初の一歩」です。
不安を感じたら、一人で抱え込まないでください
生前贈与や相続の手続きは、普段聞き慣れない言葉が出てきたり、少し複雑に感じたりすることがあるかもしれません。
「自分にできるだろうか」「間違えてしまったらどうしよう」と不安に感じてしまうのは、決して特別なことではありません。
でも、大丈夫です。最初からすべてを完璧に理解する必要はありません。今日解説したような基本的な注意点を一つずつ確認しながら、ゆっくりと進めていくことができます。
そして、もし分からないことや不安なことがあれば、一人で抱え込まずに、信頼できる誰かに相談してください。ご家族でも良いですし、税務署や専門家、役所の相談窓口など、あなたをサポートしてくれる場所はたくさんあります。
まとめ
生前贈与は、大切な方へ財産をスムーズに引き継ぐための一つの方法です。しかし、後で後悔しないためには、いくつかの基本的な注意点を知っておくことがとても大切です。
この記事でご紹介した
- 贈与契約書を作成すること
- 名義預金に注意すること
- 亡くなる直前の贈与は相続税に関わる可能性があること
- ご家族との話し合いを大切にすること
といった点を確認するだけでも、安心して生前贈与を進めるための大きな一歩となります。
難しく感じたら、遠慮なく専門家や公的な相談窓口を頼ってください。きっとあなたの力になってくれるでしょう。
これから生前贈与を考えていく上で、この記事が少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。