亡くなった方の家や土地を相続するには?知っておきたい最初の一歩
はじめに:亡くなった方の家や土地のこと
大切な方を亡くされた後、残された財産のこと、特に住み慣れた家や土地のことについて、「どうすれば良いのだろうか」「誰が引き継ぐことになるのだろうか」と、不安に感じていらっしゃるかもしれません。
不動産の相続は、普段あまり経験することのない手続きが多く、難しく感じられることがあるかもしれません。しかし、一つずつ順を追って確認していけば、決して難しいことばかりではありません。
ここでは、亡くなった方が所有されていた家や土地を相続するために、まず知っておきたい基礎知識と、最初の一歩として何をすれば良いのかについて、やさしく解説いたします。
家や土地の相続、まず何を知っておけば良い?
亡くなった方の家や土地を相続することは、「不動産を相続する」ということです。不動産を相続する際には、主に次のことを知っておくと良いでしょう。
- 誰が相続するのか(相続人について) これは、亡くなった方の配偶者やお子さんなど、法律で定められた「法定相続人」が基本となります。法定相続人が誰になるかについては、戸籍謄本などを見て確認することになります。
- どのように相続するのか 遺言書がある場合は、原則として遺言書に書かれている内容に従って相続します。遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い(遺産分割協議)、誰がどの財産を相続するかを決めます。
- 相続に関する手続きがあること 不動産を相続した場合、「名義変更」という手続きが必要になります。これは「相続登記」とも呼ばれます。この手続きをしないと、その不動産が法的に誰のものになったのかが明確になりません。
これらのことについて、最初は難しく感じるかもしれませんが、一つずつ確認していけば大丈夫です。
最初の一歩:まずは落ち着いて状況を確認しましょう
亡くなった方の不動産について考える最初のステップは、慌てずに、まずは落ち着いて状況を確認することです。
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亡くなった方がどのような不動産を持っていたか確認します 登記済権利証(登記識別情報)、固定資産税の納税通知書などを見ると、どのような不動産を所有していたか、おおよそ把握できます。これらの書類が見当たらない場合でも、市町村役場の資産税課などで固定資産に関する証明書を取得することで確認できます。
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遺言書があるか確認します もし遺言書が見つかった場合は、その内容を確認します。遺言書は、法律で定められた形式で書かれている必要があります。公正証書遺言や法務局で保管されていた遺言書など、手続きが必要な場合もあります。
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相続人が誰になるかを確認します 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本などを集めることで、法的に誰が相続人となるのかを確定させます。これは、相続手続きにおいて非常に重要なステップです。
次のステップ:相続方法を決める話し合い(遺産分割協議)
遺言書がない場合や、遺言書があっても相続人全員が同意すれば、相続人全員で「誰が、どの財産を相続するか」について話し合いを行います。これを「遺産分割協議」といいます。
- 遺産分割協議で決めること 家や土地を誰か一人が相続するのか、あるいは売却して代金を分け合うのかなど、不動産をどのように分けるか(あるいは分けずにどうするか)を決めます。
- 遺産分割協議書の作成 話し合いがまとまったら、その内容を記した「遺産分割協議書」を作成します。この書類には相続人全員が署名し、実印を押す必要があります。
この話し合いは、相続人全員が納得いくまで時間をかけて行うことが大切です。もし話し合いが難しい場合は、専門家(弁護士など)に相談することもできます。
不動産の名義変更(相続登記)について
遺言書に従うか、遺産分割協議で誰が不動産を相続するかが決まったら、次は不動産の名義を亡くなった方から相続人に変更する手続きを行います。これが「相続登記」です。
相続登記は、法務局に申請して行います。
- なぜ相続登記が必要なのですか? 相続登記をしないと、登記簿上は亡くなった方の名義のままとなり、不動産を売却したり、担保に入れたりすることができなくなります。また、次の世代に相続が発生した際に、さらに手続きが複雑になる可能性があります。
- いつまでにすれば良いですか? 相続登記は、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請することが法律上の義務となりました(令和6年4月1日から)。期限を過ぎると過料(罰金のようなもの)が科される場合がありますので、早めに手続きをすることが望ましいです。
- どのような書類が必要ですか? 申請には、亡くなった方の戸籍謄本一式、相続人全員の戸籍謄本、住民票、遺産分割協議書(または遺言書)、固定資産評価証明書など、様々な書類が必要になります。
どこに相談すれば良いですか?
不動産の相続手続きは、必要書類が多く、少し複雑に感じられるかもしれません。一人で全てを抱え込まず、信頼できる専門家や窓口に相談することが大切です。
- 法務局 相続登記の手続きを行う場所です。登記に関する一般的な相談窓口が設けられていることもあります。
- 司法書士 不動産の相続登記の専門家です。書類作成や申請手続きを依頼することができます。
- 弁護士 遺産分割協議で相続人間での話し合いがうまくいかない場合など、法律的な問題や紛争解決について相談できます。
- 税理士 相続税が発生するかどうか、相続税の計算や申告について相談できます。
- 地域の相談窓口 市町村役場や、地域包括支援センターなどで、相続に関する一般的な情報提供や、適切な相談先を紹介してくれる場合があります。
まずは、お近くの法務局や司法書士会などに問い合わせてみることから始めても良いでしょう。
まとめ:最初の一歩を踏み出しましょう
亡くなった方の家や土地の相続は、多くの手続きが必要に感じられるかもしれません。しかし、「まず不動産を確認する」「遺言書や相続人を確認する」「必要であれば話し合いをする」といった、最初の一歩から始めてみましょう。
手続きは一つずつ確認しながら進められます。分からないことや不安なことは、遠慮なく専門家や窓口に相談してください。
この記事が、不動産の相続手続きを進める上での最初の一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。