自分で書く「遺言書」ってどうすればいいの?最初の一歩をやさしく解説
「将来、自分の財産を誰にどう渡すか、自分で決めたい」とお考えになる方もいらっしゃるかもしれません。 遺言書と聞くと、難しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。 実は、遺言書にはいくつかの種類がありますが、ご自身で手軽に書けるものもあります。
このページでは、「自分で書く遺言書」の基本的な知識と、まず何から始めれば良いのか、最初の一歩についてやさしく解説します。 難しく考えすぎず、「こんな方法があるんだな」という気持ちで読み進めていただけたら幸いです。
自分で書く「遺言書」(自筆証書遺言)とは?
遺言書には、主に3つの種類があります。
- 自分で書く遺言書(自筆証書遺言)
- 公証役場で作成する遺言書(公正証書遺言)
- 秘密にしておく遺言書(秘密証書遺言)
この中で、自分で手軽に始めやすいのが「自筆証書遺言」です。 名前の通り、遺言を残したいご本人が、ご自身の「手」で書く遺言書です。 専門家などに頼まずに、お一人で書くことができます。
公正証書遺言のように公証役場へ行く必要もなく、費用もほとんどかからないため、「まずは自分の考えを形にしてみたい」という方に選ばれることが多い方法です。
自筆証書遺言の「きほんのき」:最低限守ること
自筆証書遺言は、特別な用紙や形式は決まっていませんが、法律で定められた最低限のルールを守る必要があります。 このルールを守らないと、遺言書として認められないことがありますので、大切なきほんです。
守るべきルールは、主に以下の4つです。
- 遺言書の全文を、自分で手書きする
- 遺言書を書いた「日付」を正確に書く
- 遺言書を書いた「氏名」を自分で書く
- 遺言書に「押印」する
この4つは、遺言書がご本人の意思で、いつ作成されたものかを明確にするためにとても重要です。パソコンで作成したり、誰かに代筆してもらったりすると、原則として無効になってしまいますので注意が必要です。
【補足】財産目録について 遺言書で「どの財産を誰に渡すか」を示す際に、「財産目録」を添付することがあります。 この財産目録については、パソコンで作成しても認められるようになりました。(2020年7月10日から施行された新しいルールです。) ただし、財産目録の各ページに署名と押印が必要です。そして、遺言書の本文は必ず手書きする必要がありますので、この点は混同しないようにしてください。
まず何から始める?自筆証書遺言作成の「最初の一歩」
「自分で書いてみようかな」と思ったら、まず何から始めれば良いでしょうか? 難しく考えず、まずは以下の最初の一歩から始めてみましょう。
最初の一歩 ステップ1:誰に何を渡したいか、考えてみましょう
まず、大切なご家族や周りの方々へ、「どのような財産を、誰に渡したいか」をじっくり考えてみましょう。 財産は、預貯金、土地や建物、有価証券、貴金属など、様々なものがあります。 「誰に」「どの財産を」「どれだけ」渡したいのか、まずは書き出してみると考えが整理できます。これは、遺言書の「内容」を決める一番大切な部分です。
最初の一歩 ステップ2:紙とペンを用意してみましょう
遺言書の本文を手書きするための紙とペンを用意します。特別なものでなくても構いません。書き慣れたノートや便箋でも大丈夫です。
最初の一歩 ステップ3:ステップ1で考えた内容を、きほんに沿って書き始めてみましょう
ステップ1で考えた「誰に何を渡したいか」を、ステップ2で用意した紙に書き写していきます。 この時、「きほんのき」で説明した以下の点を忘れないように書きましょう。
- 本文を自分で手書きする
- 遺言書を書いた日付を書く(例:「令和〇年〇月〇日」)
- ご自身の氏名を書く
最初の一歩 ステップ4:書き終えたら、押印をしましょう
書き終えた本文の最後に、ご自身の氏名の横などに押印します。実印である必要はありませんが、認印でも構いません。ただし、シャチハタのようなゴム印は避けた方が良いとされています。
最初の一歩 ステップ5:遺言書をどこに保管するか考えましょう
自分で書いた遺言書は、ご自身で保管することになります。自宅で保管することもできますが、紛失や改ざんを防ぐために、法務局で預かってもらう制度(自筆証書遺言書保管制度)を利用することもできます。 法務局での保管制度を利用する場合は、手続きが必要になります。詳しくは、お近くの法務局にご相談ください。
自分で書くときの注意点
自筆証書遺言は手軽ですが、いくつかの注意点があります。
- 日付は正確に: 「〇年〇月吉日」のようなあいまいな書き方では認められません。「令和〇年〇月〇日」のように、特定できる日付を書きましょう。
- 加筆や修正に注意: 遺言書の内容を加筆したり修正したりする場合は、法律で定められた方法で行わないと、その修正が無効になることがあります。複雑な訂正をするくらいなら、最初から書き直す方が確実です。
- 財産を正確に特定: 誰にどの財産を渡すかを書く際には、その財産が何かを具体的に分かるように書きましょう。例えば、土地や建物の場合は登記簿謄本を見て正確な住所や地番などを書く方が、後で手続きをする方が困りません。預貯金であれば、銀行名、支店名、預金の種類(普通、定期など)、口座番号などを書くとより明確です。
内容があいまいだったり、書き方に不備があったりすると、せっかく書いた遺言書が有効にならない可能性や、後で相続をされる方が困ってしまう可能性があります。 しかし、「完璧な遺言書を書こう」と最初から気負いすぎる必要はありません。まずは「誰に何を渡したいか」を紙に書き出してみることから始めるのが大切です。
もっと詳しく知りたい、不安があるときは?
「自分で書いてみたけれど、これで大丈夫か不安だ」「もっと詳しく書き方を知りたい」「法務局での保管制度について聞きたい」など、疑問や不安が出てくるのは自然なことです。 そんな時は、一人で悩まずに誰かに相談してみましょう。
- 公的な相談窓口: 市役所や区役所、地域包括支援センターなどで、相続や遺言に関する相談窓口を設けている場合があります。まずは、お住まいの自治体に問い合わせてみるのも良いでしょう。
- 専門家: 法律に関することは弁護士や司法書士、税金に関することは税理士など、専門家にご相談することもできます。遺言書の作成について専門家のアドバイスを受けたり、公正証書遺言の作成を依頼したりすることも可能です。ただし、相談には費用がかかる場合があります。
まとめ
「自分で遺言書を書いてみたい」というお気持ちは、大切なご家族への思いやりの表れだと思います。 自筆証書遺言は、ご自身の考えを気軽に形にできる方法の一つです。 全文を手書きし、日付、氏名、押印という最低限のルールを守れば作成できます。
まずは、「誰に何を渡したいか」を考えて、紙に書き出してみることから始めてみましょう。 書き進める中で疑問や不安が出てきたら、自治体の相談窓口や専門家など、信頼できる場所に相談することもできます。
すべてを一度に完璧にしようと思わず、最初の一歩から、ご自身のペースで考えて進めていくことが大切です。