相続手続き、どこまで自分でできる?専門家に相談する目安と最初の一歩をやさしく解説
相続手続き、一人で抱え込んでいませんか?
大切な方を亡くされて、悲しみの中、相続手続きをどう進めたら良いのか、途方に暮れていらっしゃるかもしれません。 「書類がたくさんあって難しそう」「自分で全部やらなければいけないの?」と、不安に感じている方も少なくないでしょう。
相続の手続きは、確かに様々なステップがあり、時間もかかります。 しかし、決して一人ですべてを抱え込む必要はありません。 状況に応じて、専門家の力を借りることも十分に考えられます。
この記事では、相続手続きで「どこまでご自身でできるのか」、そして「どんな場合に専門家へ相談することを考えると良いのか」について、分かりやすい目安と、最初の一歩を解説します。
相続手続きで「自分でできること」の目安
相続手続きの中には、比較的ご自身で進めることができる部分もあります。
例えば、
- 役所への届け出の一部: 死亡届の提出など、早急に必要な手続きはご自身で行うことが一般的です。その後の様々な手続きの出発点となります。
- 財産リストの作成: 亡くなった方の財産(預金、不動産、保険など)を把握するためのリスト作りは、ご自身で行うことができます。まずは、手元にある通帳や権利証、郵便物などを集めてみましょう。
- 相続人の確認: 誰が相続人になるかを確認するために、戸籍謄本などを集める作業も、ご自身で行うことが可能です。
- 簡単な話し合い: 相続人の間で、遺産の分け方について話し合いを始めることもできます。
これらの手続きは、ご自身で時間や手間をかけて行うことで、費用を抑えることができるという利点があります。 ただし、書類の収集や手続きの進め方には専門的な知識が必要な場合もありますので、もし分からないことや不安なことがあれば、無理に進めようとせず、後述する相談先を考えてみてください。
どんな時に「専門家にお願いすること」を考えると良いか?
相続手続きは、状況によっては複雑になり、専門家の力が必要となる場合があります。 次のような場合は、専門家への相談を検討する良い目安となります。
- 相続人が多い、または連絡を取りにくい: 相続人の数が多かったり、疎遠な方がいたりすると、全員での話し合いや書類のやり取りが難しくなることがあります。
- 遺産の種類が多い、または複雑: 不動産が複数あったり、株式や投資信託、名義預金など、普段あまり扱わない財産が含まれている場合、評価や手続きが複雑になることがあります。
- 相続人の間で話し合いがまとまらない: 遺産の分け方について、相続人の間で意見が対立してしまうことがあります。話し合いが感情的になり、ご自身たちだけでは解決が難しいと感じたら、専門家の助けを借りることを考えてみましょう。
- 借金など、マイナスの財産が多い: 亡くなった方に借金がある場合など、相続放棄を検討する必要があるかもしれません。相続放棄には期限があり、専門的な判断が必要です。
- 相続税の申告が必要になりそう: 相続する財産の合計額がある金額(基礎控除額といいます)を超える場合、相続税の申告が必要になります。税金の計算や申告手続きは非常に複雑です。
- 手続きの期限が迫っている: 相続放棄や相続税の申告など、相続手続きには期限が定められているものがあります。期限が近い場合は、迅速な対応が必要となるため、専門家を頼るのが安心です。
- そもそも、何から手をつければ良いか全く分からない: 「まず何をすれば良いか分からない」「手続き全体が難しすぎて理解できない」という場合も、一人で悩まずに専門家や詳しい人に相談するのが良いでしょう。
専門家にお願いすると費用はかかりますが、手続きをスムーズに進められたり、法的に間違いのない形で行えたり、ご自身の時間や精神的な負担を減らせたりといったメリットがあります。
専門家に相談する「最初の一歩」
「専門家に相談してみようかな」と思ったら、まずは次のような「最初の一歩」を踏み出してみましょう。
1. 今、何に困っているのか整理してみる
専門家に相談する前に、ご自身がどんなことに困っているのか、何が分からないのかを簡単に書き出してみましょう。 「戸籍謄本の集め方が分からない」「家をどう分けたら良いか知りたい」「相続税がかかるか心配」など、具体的な疑問点を整理しておくと、相談がしやすくなります。
2. どんな専門家がいるのか知る
相続に関する専門家には、いくつか種類があります。
- 弁護士: 相続人の間で揉め事がある場合など、法律問題の解決や交渉を得意としています。
- 司法書士: 不動産の名義変更(相続登記)や、家庭裁判所への手続き(相続放棄など)を得意としています。
- 税理士: 相続税の計算や税務署への申告手続きを得意としています。
- 行政書士: 相続人の調査や財産目録の作成、遺産分割協議書の作成など、書類作成を得意としています(ただし、争いのあるケースは扱えません)。
ご自身の「困りごと」に応じて、どの専門家が詳しいかを知っておくと、相談先を選びやすくなります。
3. 身近な相談先を探してみる
最初から特定の専門家を探すのが難しい場合は、まずは身近な相談先を利用してみるのも良い方法です。
- 市区町村の相談窓口: 無料の法律相談や税務相談を実施している場合があります。
- 地域包括支援センター: 高齢者の生活全般の相談に乗ってくれる機関ですが、相続に関する基本的な情報提供や、適切な相談先へのつなぎ役となってくれることもあります。
- 弁護士会や税理士会の相談センター: 専門家団体が運営する相談窓口で、初回無料相談を行っている場合が多いです。
- 金融機関(銀行など)の窓口: 相続に関する基本的な手続きや、連携している専門家を紹介してくれる場合があります。
こうした場所で、まずは専門家に相談すべき状況なのか、どのような専門家が良いのかなど、アドバイスをもらうことから始めることができます。
一人で抱え込まず、頼れる先を知っておきましょう
相続手続きは、多くの方にとって初めての経験であり、不安はつきものです。 すべてをご自身だけで完璧に行おうと思わず、分からないことや難しいと感じる部分は、専門家や詳しい人に相談することを考えてみてください。
まずは「何に困っているか」を整理し、身近な相談窓口を利用してみるのが「最初の一歩」です。 少しずつ、一つずつ確認しながら進めれば、きっと安心して手続きを終えることができるでしょう。
もし、専門家への相談を決められたら、複数の専門家から話を聞いてみるなど、ご自身に合う専門家を選ぶことも大切です。
この情報が、あなたの不安を少しでも和らげ、最初の一歩を踏み出すためのお役に立てれば幸いです。