亡くなった方の財産、いくらで評価する?相続財産の評価のきほんをやさしく解説
相続財産の評価とは? なぜ評価が必要なのでしょうか
大切な方が亡くなられた後、遺された財産をどのように分け合うか、そしてもし相続税がかかる場合はいくらかかるのかを知るためには、その財産一つひとつに「いくらの価値があるのか」を計算する必要があります。この「価値を計算すること」を、相続の世界では「財産を評価する」と呼んでいます。
財産を評価することは、主に二つの大切な目的があります。
- 遺産分割のため: ご家族で話し合い、遺産を公平に分けるためには、それぞれの財産がどれくらいの価値を持つのかを知ることが大切です。例えば、現金は分かりやすいですが、家や土地、株式などは、その時々で価値が変わることもあります。みんなが納得して遺産を分けるために、財産を評価することが必要になります。
- 相続税の計算のため: 相続する財産の合計額が、相続税がかかる基準(これを「基礎控除」といいます)を超える場合には、相続税を納める必要があります。相続税の金額を決めるためには、法律で定められた方法で財産の正確な評価額を計算しなければなりません。この評価額に基づいて、最終的な相続税の金額が決まります。
このように、相続財産の評価は、遺産を円満に分けるためにも、必要であれば相続税を正しく計算するためにも、とても大切なことなのです。
相続財産は「亡くなった日」の価値で評価します
相続財産の評価は、原則として「亡くなった日(相続開始日)」時点の価値で行われます。
例えば、亡くなった方に銀行預金があった場合、亡くなった日の残高が評価額となります。もし、亡くなった後に受け取った利息がある場合も、通常は相続財産に含めて評価します。
ただし、財産の種類によっては、この「亡くなった日」の価値をどのように計算するかが、少し複雑になる場合があります。次の項目で、主な財産の評価の基本的な考え方を見ていきましょう。
主な相続財産の評価のきほん
相続する財産には、現金や預貯金だけでなく、土地や建物、株式など、様々な種類があります。それぞれの財産によって、評価の仕方が異なります。ここでは、特に知っておきたい基本的な評価の考え方をご紹介します。
1. 現金・預貯金
現金や普通預金、定期預金などは、評価が比較的 straightforward(分かりやすい)です。
- 評価額: 亡くなった日の残高がそのまま評価額となります。
- 確認方法: 銀行から発行される「残高証明書」などで確認できます。
タンス預金など、ご自宅にある現金も、亡くなった日の金額を確認し、相続財産に含めます。
2. 株式などの有価証券
上場している株式など、金融商品にも様々な種類がありますが、ここでは最も一般的な「上場株式」の基本的な考え方です。
- 評価額の基本的な考え方: 亡くなった日の株価などが基準になります。ただし、相続税の計算上は、亡くなった日の株価だけでなく、亡くなった月の平均株価など、いくつかの選択肢の中から一番低いものを評価額とすることができます。(このあたりは少し専門的になります)
- 確認方法: 証券会社から送られてくる取引報告書や残高報告書などで確認できます。正確な評価額の計算には、専門的な情報や知識が必要になる場合があります。
3. 土地や建物(不動産)
ご自宅やアパート、駐車場などの不動産は、相続財産の中でも評価が複雑になりやすいものです。
- 土地の評価の基本的な考え方:
土地の評価方法は、その土地がある場所によって「路線価方式(ろせんかほうしき)」か「倍率方式(ばいりつほうしき)」のどちらかを使うのが一般的です。
- 路線価方式: 道路に価格がつけられており(これを「路線価」といいます)、その価格をもとに計算する方法です。
- 倍率方式: 路線価が定められていない地域で、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算する方法です。 どちらの方式を使うかは、国税庁のホームページなどで確認できますが、実際の計算には土地の形や状態なども考慮するため、正確な評価は専門的な知識が必要になります。
- 建物の評価の基本的な考え方:
建物の評価は、原則として「固定資産税評価額」が基本になります。
- 固定資産税評価額: 市町村(東京23区は東京都)が固定資産税を計算するために定めた、建物の価値を示す金額です。
- 確認方法: 不動産の固定資産税評価額は、毎年送られてくる「固定資産税の納税通知書」や、市町村役場で取得できる「固定資産評価証明書」で確認できます。
正確な不動産の評価額を知ることは、相続税の計算において非常に重要になります。
4. その他
上記以外にも、生命保険金、退職金、自動車、骨董品や美術品、さらには借金などのマイナスの財産も相続財産に含まれます。
- 生命保険金・退職金: これらは、亡くなった方が生前に契約していたものですが、相続財産とみなされ、評価の対象になります。ただし、一定の金額までは相続税がかからない「非課税枠」があります。
- 自動車や貴金属: 売却するといくらになるか、という時価(市場での価格)が評価の目安になります。
- 借金など: マイナスの財産もすべてリストアップし、評価額(残っている金額)を正確に把握する必要があります。
自分でできること、そして専門家に相談すべきこと
相続財産の評価は、財産の種類によってはご自身で大まかに把握できるものと、専門家にお願いしないと正確な計算が難しいものがあります。
まずはご自身でできること:
- 財産をリストアップする: 前回の記事でご紹介したように、まずはどのような財産があるのかをすべて書き出してみましょう。
- 預貯金や保険の残高を確認する: 銀行の残高証明書や保険会社からの通知などで金額を確認します。
- 不動産の固定資産税評価額を確認する: 毎年届く固定資産税の納税通知書や、役場で評価証明書を取得して確認します。
これだけでも、ご自身の相続財産の大まかな全体像と価値が見えてきます。
正確な評価や複雑な財産の評価、相続税が心配な場合は:
- 土地の正確な評価: 路線価に基づいた計算や、複雑な形状の土地の評価は、専門的な知識が必要です。
- 非上場株式や個人で経営している事業に関する財産: 評価が非常に複雑になります。
- 骨董品、美術品など、特殊な財産: 専門的な鑑定が必要になる場合があります。
- 相続税がかかるかどうかの判断や、申告: 相続税の計算は税法の知識が必要であり、間違いがないように行うためには専門家(税理士など)に相談するのが安心です。
このような場合は、ご自身で無理に進めようとせず、専門家にご相談することを強くお勧めします。
困ったときは、まずは相談してみましょう
相続財産の評価は、確かに少し難しく感じるかもしれません。しかし、一つずつ、ご自身のペースで確認していくことが大切です。
もし、評価の仕方が全く分からない、この財産はどうなるのだろう、相続税が心配だ、と感じたら、一人で抱え込まずに、信頼できる場所に相談してみましょう。
- 税務署: 相続税に関する一般的な相談ができます。(ただし、個別の具体的な計算方法などには踏み込まない場合があります)
- 税理士: 相続税の計算や申告の専門家です。正確な財産評価や相続税に関する具体的な相談、手続きの依頼ができます。
- 弁護士: 相続に関する法的な手続き全般、特に遺産分割の話し合いが進まない場合などの相談ができます。
- 司法書士: 不動産の相続登記など、財産の名義変更に関する手続きの専門家です。
お住まいの地域の役所や、地域包括支援センターなどで、相続に関する相談窓口を紹介してもらえる場合もあります。
まとめ
相続財産の評価は、遺産を分けるためにも、必要なら相続税を計算するためにも必要な大切なステップです。原則として亡くなった日の価値で評価しますが、財産の種類によって考え方が異なります。
まずは、ご自身の相続財産にどのようなものがあるのかをリストアップし、預貯金や不動産の固定資産税評価額など、ご自身で確認できるところから始めてみましょう。
正確な評価が必要な場合や、相続税が心配な場合は、税理士などの専門家や税務署に相談することで、安心して手続きを進めることができます。難しく考えすぎず、まずは最初の一歩を踏み出してみてください。